『ギャリー邸事件(The Incident at the Galley House)』の簡体中国語版の翻訳者様に、本ゲームの翻訳についてお伺いした内容を、日本語訳した上でインタビュー風に再構成しました。

赤銅先生
『ギャリー邸事件』および『The Roottrees are Dead』の簡体中国語版の翻訳を担当されたすごい人。

Humano
『Type Help』『ギャリー邸事件』日本語訳を担当。その立場を利用して赤銅先生のお話をお聞きした。

2026年7月14日、とうとう『ギャリー邸事件』が発売されますね! おめでとうございます! そして、翻訳完了おめでとうございます!

ありがとうございます! Humanoさんもおめでとうございます! 無事に発売されて本当に良かったですね。

発売にあわせて『ギャリー邸事件』簡体中国語版翻訳についてお話をお伺いする機会をいただき、ほんとうにありがとうございます!

さっそくですが、『ギャリー邸事件』は、とある出来事にまつわる「コード」を調査するゲームであり、人物名や場所名が推理の手がかりとなります。
原作の『Type Help』は多言語に対応しているものの、コードは英語版と共有でした。そのため各言語の翻訳者が、固有名詞を英語のままにしたり、はたまたコードそのものを文中に併記したりと工夫していました。



一方の『ギャリー邸事件』では、言語ごとにコードが設定されています。
『ギャリー邸事件』中国語版を拝見したところ、コードをピンインの頭文字にされていましたね。もし差し支えなければ、その発想に至った経緯を教えていただけませんか。


ピンイン方式は、正直に言うと《必要に迫られての妥協案》なんです。

前提として、場所や名前を中国語に翻訳すると、すべて漢字になりますよね。この漢字をコードにすることも考えましたが、大きな技術的制約がありました。
本ゲームでは、コントローラー操作でコードを入力する場合、あらかじめ定められた文字のリストを十字キーでスクロールして選択します。この入力方法を考えると、漢字は現実的ではありませんでした。

そこで、《入力候補の文字数が少ない》という条件を満たしつつ、原語のアルファベット入力を維持できるピンイン方式を採用しました。


なるほど、そのような経緯だったんですね! 実は日本語版も、当初はローマ字方式を検討していたんです。

ただし、日本語には《ヘボン式》と《訓令式》という二つのローマ字表記方法があり、さらには《英単語の綴り》を参照するプレイヤーも想定されたことから、混乱が目に見えていました。かといってキーワードを英単語のまま残すのは「英語を知らずとも遊べる」というローカライズの方針に沿いません。そこで、カタカナ方式にしました。

そのため、コントローラー操作をする日本語プレイヤーは、80文字近くのカタカナをスクロールする必要があります。アルファベットは26文字しかないことを考えると、お手数をおかけすることになってしまいました……。

実は、ピンイン方式の利点は入力面だけではなく、ゲーム後半の「ある人物」の展開と自然につながるところにもあるんです。

本ゲームは、《場所の頭文字》から始まり、《部屋を持つ人物の頭文字》、《ある人物の頭文字》、そして後半では《IDリストに載っている名前の頭文字》へと、プレイヤーの思考を段階的に誘導する構成になっています。
この流れを成立させるため、簡体中国語版では登場人物の名前の音訳も調整し、ピンインの頭文字を原語版のイニシャルと一致させてあるんですよ。


パズルを保つために、キャラクター名まで調整されているんですね! 丁寧ですごい! そして、お聞きするだけで大変そうな作業ですね……。

ところで……ピンイン方式にすることによって、パズルの難易度はどう変化したと感じていますか。

パズルとしての難易度という意味では、ピンインはかなり適していると思っています。
個人的な考えでは、このコード入力自体はパズルの本質ではなく、プレイヤーが「気づく」ための仕掛けです。だから重要なのは、「秘密の暗号を解いている」という雰囲気を演出すること。この雰囲気に、ピンイン方式はとても適しています。

これも、漢字を使わなかった理由の一つです。たとえば、漢字にすると2文字になる部屋名もあります。これをコードにしてしまっては、同じような感覚は生まれません。

ああ、それはよくわかります。カタカナ方式のコードも原語版よりも情報量が多いため、作業中は悩まされました。
しかし、カタカナはナンバリングに使われるなど、どこか無機質なイメージがあります。そのため、コードを解き明かす感覚は保てたかなと思っています。

赤銅さんはSteam版『The Roottrees are Dead』の簡体中文翻訳も担当されていて、多くの方が赤銅さんの翻訳でゲームを楽しまれていますよね。
同じEvil Troutさんが開発する『ギャリー邸事件』についても、お互いに、多くの方に遊んでいただくのが楽しみですね! ほんとうに素敵なゲームですから。

『The Roottrees are Dead』と同じく、『ギャリー邸事件』もすばらしい推理体験を提供してくれる心からの名作です。遊ぶ言語にかかわらず、プレイヤーの方々がこの美しく作り込まれた世界に没入して、数々の《なるほど!》というひらめきを味わえることを願っています。
ぜひ、この作品ならではの謎解きの魅力を楽しんでください!
いろんな言語(簡体中文、日本語、フランス語、ドイツ語、そして英語)でプレイできる!

