『日刊ドラキュラ』スペース書き起こし(2023年6月11日22:00-22:30)

Literature
要点のみザックリ書き起こし。修正や注釈はマイクロテキストで記載。細かい箇所は違っているかも。

イントロ

ドラキュラについて話したい欲が高まったのと、6月は『日刊ドラキュラ』配信が少ないのとで、場を設けた。

『日刊ドラキュラ』一章(ドラキュラ城に着くまで)をコメンタリー付けながら読み飛ばしていく。6月5日以後のネタバレは可能な限り避ける。

(来てくださった方が『吸血鬼すぐ死ぬ』のアイコンだったので)『日刊ドラキュラ』のフォロワーにロナルドさんのアイコンが多いので気になって、さいきん最新刊まで読みました。

ジョナサン・ハーカーの日記

スウェーデンで1900年に新聞連載されていたドラキュラの海賊版では、トーマス・ハーカーになっていた。ミナやアーサーなど他のキャラクターは名前変更されていない。ジョナサンはとても良い名前なので、なぜなのか不思議。なお、ストーカーの同僚で舞台デザイナーのジョセフ・ハーカーから拝借した名前だと言う人も。

スウェーデン語の海賊版ドラキュラこと『Powers of Darkness』が新聞連載されていたのは1899年。ここでは1年覚え違いをしている。

(速記による記述)

速記が近代的と見なされていたことが読み取れる。速記法には色々な種類があり、一般的だったのはGregg Shorthand。Gregg Shorthandは、isがハイフンめいていたりして面白い。さらに面白いのは、これが表音式であったこと。つまりWednesdayなどの不可解な綴りはdやnを抜いて記す。前に『チャイニーズ・タイプライター』を読んだ時に、表意文字を前時代的だと腐して表音文字を称える当時の西洋の考えが紹介されていた。自身の言語についても効率を求めた?

五月一日の午後八時三十五分にミュンヘンを発ち、

時間に固執している。ストーカーの創作ノートを読んだのだが、Excelの無い時代に手書きでキャラクター毎の時系列整理をしており感動した。時系列毎に物事を並べるのは自分も好きなので、ストーカーに共感できた。後半では、とあるキャラクターが列車時刻表オタクだと判明する。ストーカーの時刻へのこだわりが読み取れる。

駅への到着が遅れた列車なので、可能な限り本来の時間に併せて発進するだろうと考え、駅からあまり離れられなかった

この文章は、角川版(田内版)と違うとコメントをいただいた。可能であれば原文と比べてほしい。

角川版『ドラキュラ』と『日刊ドラキュラ』は底本が同じ。角川版は、後書きで「Reider Books」を底本に挙げている。「Reider Books」は、Andrea Reiderさんというデザイナーが、Gutenberg版345番(いわゆるアメリカ版)をPDFに加工して自サイト上で公開していたもの。『日刊ドラキュラ』の底本も345番。

ただし、角川版は文章の要所要所がイギリス版なので、Reider Books以外にも底本がある可能性が高い。

ドナウ川にかかる、最も西洋的な美しい橋は

 GoogleMapでそれっぽい橋を訪ねた。綺麗だった。

《パプリカヘンドル》

 パプリカヘンドル、作ってみた。美味しかった。ソースがめちゃめちゃ余って焦ったが…。

郵便拠点地

 RDR2をプレイした人ならわかると思う。各人のポストが郵便局にあり、そこに近隣の村から郵便物を取りに来る。ジョナサンは都会人なので、ポストの整備も進んでおり、家もしくは家近くまで届いていたはず。

《ママリガ》と呼ぶトウモロコシ粉のお粥のようなものと、とても美味しい《インプレッタータ》

 調べたママリガのレシピは、コーンミールとチーズとサワークリームとバターが入ったもので、かなりコーンスープめいていた。インプレッタータは謎。Wolfはこれをpatlagele impuluteのことじゃないかと書いていた。

Leonard Wolfによる注釈版には、翻訳の過程で大変お世話になった。本スペースでも頼りになった。

両側が石だらけでいかにも度々大洪水が起こっていそうな河川や小川を通り過ぎたりした。あの川の両岸を洗い流すには、相当な水量と強い流れが必要だろう。

翻訳されると平易に感じられるが、最初読んだ時理解できなかった箇所。一見地味な箇所でつまづきがち。英語力が足りないため。

原文「sometimes we ran by rivers and streams which seemed from the wide stony margin on each side of them to be subject to great floods. It takes a lot of water, and running strong, to sweep the outside edge of a river clear.」。今は読める。

女たちは、近寄らなければ可愛らしく見えるが、腰回りがとても不格好だ。

 コルセットをしていなかったと言う意味? 失礼な言葉。noteしてたら炎上するタイプ。

聖ジョージの日の前夜祭

 聖ジョージはドラゴン退治のヒーロー。ルーマニアといえばドラゴン。ドラキュラくんも名前がドラゴンっぽい。今の時点でドラキュラくんの正体は書かれていないので、関連があるかは分からないが…。

ゲオルギオスの英語表記。日刊ドラキュラではWikipediaへのリンクを貼ってある。

しかし何人たりとも仕事の邪魔は許されない。

 新人さんっぽくて好き。高い出張費を無為にして逃げ帰れない気持ちはわかる。

猫餌用肉【訳注:Cat’s Meat。ロンドンでは馬肉等の切れを猫餌用としてCat’s Meat Manが売っていた】のステーキのような簡素な料理だ

猫餌用肉と訳してしまったが、英語で調べたところ単に馬肉と解説しているところも多く、それでも良かったなと思った。ジョナサンは「豪華な食事じゃない」証拠としてメニューを書いているので、豪華な食事じゃない感じを出した方がいいかなと、「猫用」を残した。

ゴールデン・メディアッシュで、

 調べてもどんなワインか分からなかった。

多言語辞書を

多言語辞書気になる。世の中にはこんな便利なものがあるのか? 括弧内にジョナサンの英訳が書いてあるので、それを一つ一つ見ていきたい。

《Ordog 》(サタン)、《pokol 》(地獄)、《Stregoica 》(魔女)、そして《vrolok》《vlkoslak》(どちらも同じ意味で、一方はスロバキア語、他方はセルビア語でオオカミまたはヴァンパイアのことだ)があり、少し陰鬱な気持ちになった。

Ordog:ハンガリー語で悪魔。

Pokol:ハンガリー語で地獄。

Stregoica:Wolfによると、ルーマニア語のヴァンパイア女性形。ヴァンパイアは、物語上の怪物のこと。吸血鬼と訳されることもある。この物語にどう関わってくるのかは、現時点では何も言えない。

Vrolok & Vlkoslak:調べても分からなかった。Wolfは最初の言葉を人狼のセルビア語のルーマニア形、後者をヴァンパイアの一種と書いていた。

宿屋を最後に見たときの風景を、決して忘れることはないだろう。大勢の人が絵のように体を寄せ合って広いアーチの周りに立っていた。その背景には、庭の中央に密集して置かれた緑豊かな鉢植えである、夾竹桃とオレンジの木があった。

原文では一文だった箇所を、三つに切った。長い文章をそのまま翻訳するタイプだったが、それだと分かりにくい箇所が多すぎるので、短く切るタイプに鞍替えした。

夾竹桃は、キョウチクトウとカタカナにするか迷った。基本的には木の名前はカタカナにしてある。しかし、間延びすることを防ぎたかったので、夾竹桃は漢字表記。

原文「I shall never forget the last glimpse which I had of the inn-yard and its crowd of picturesque figures, all crossing themselves, as they stood round the wide archway, with its background of rich foliage of oleander and orange trees in green tubs clustered in the centre of the yard. 」長い。

この《ミッテルランド 》と呼ばれる緑の丘の中を、

つまりはミドルランド。中つ国。アルファベットのままにした方が良かったかも。

時々、荷馬車の側を通り過ぎたが、その荷馬車の長い蛇のように曲がった支柱は、デコボコとした道に合わせて設計されていた 。

この荷馬車は、ライターワゴンと書かれていた。自分の理解が正しければ、小さな車が支柱によって列車のように連結されており、道に沿うような荷車。

四頭の馬が引く小型馬車が僕たちの後ろから走ってきて追い越し、僕たちの乗合馬車の横に停まった。

すべて云々馬車と翻訳しているが、原文は名前が違う。ジョナサンが乗ってきたのがcoach、すれ違った荷馬車はwagon(cartとも言われていた)。ここで現れた小型馬車はcalash。carriageも馬車を表す意味で使われている。carriageは列車の客室の意味でも使われている。

僕たちを向いたときにランプの光に照らされて赤く見えた、一対の非常に明るい目の輝き

 ギリシアのヴァンパイアは目が青色らしい。

(ここで30分を超過したことに気づく)駆け足で一章最後まで行きます。

スリヴォヴィッツ(この国のプラムブランデーだ)

すごく美味しいらしい。他の箇所で出てくる「トカイワイン」も美味しかった。

訳注をつける単語を選定する過程でノートを作成した。このスペースでは、そのノートを見ながら話している。スリヴォヴィッツも訳注を入れるか迷った。

この延々と繰り返された出来事は、今思うと恐ろしい悪夢のようだから、もしかしたら眠ってしまっていたのかもしれない。

自分で自分をガスライティングしている。ジョナサンがこの後「自分が信じられない」と苦しむのと、性格が一貫している。

アウトロ

一章が終わったのでここまで。ちなみに、小学生用のドラキュラ(みらい文庫)を読んだことがあるが、それだとここまでで見開き3ページだった。まとめ力がすごい。

やや不安だったが、読んでると話したいことが出てきて良かった。来てくださって本当にありがとうございます。

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